ラルマンジャのシングルレール
"Engineering"1870年、5月20日
輸送需要の低い場所での安価な鉄道建設は過去2、3年の中での構想はあったのだが、J.Larmanjat氏は初めて1968年夏、RaincyとMontfermeilの間で短距離の試験線を建設した。
ラルマンジャ式トラム線路というのは、1本の中央レール(重量は25.5ポンド/ヤード【11.2kg/m】)を良好な道路全線に敷設するものである。
客車を引く機関車の車輪は4つでその内2輪は駆動輪で普通の道路上に乗り、他の2輪は外周に溝があり、車体中心に取り付けて中央レール上に乗るものである。
この方法により、車体重量は適当に駆動輪にかかる。

引かれる客車は今まで述べてきたのと同様な4輪で同様な配置であるが、客車の場合はバネの調整により、大部分の重量が中央レール用車輪にかかり、他の2輪は車体の安定を取っているに過ぎない。

ラルマンジャ氏のシステムの目的は機関車の大きな重量は道路走行用駆動輪に負担させ、同時に客車重量の大部分をレールに負担させて客車の牽引抵抗力を軽減するというものである。
良好な道路がある条件では、必要なのはレールとレールジョイナーだけであり、建設費用は440ポンド/マイル【注】である。この費用の中には材料費と、道路用車輪が通る部分の路面強化に必要な労働者の労賃が含まれる。
しかし、道路の片側がどぶの脇を通るような場所ではそのへりを強化しなければならない(8図)。このような場合では建設費用は550ポンド/マイルになる。
さらに、道路状態が悪く両側を強化しなければならないような時(9図)には880ポンド/マイルとなる。

ラルマンジャ氏の機関車は以下の2種類である。
@運転整備重量10t、2%の勾配で50tの牽引、6マイル/時【9.6km/h】の速度を出す機関車。
A運転整備重量5t、2%の勾配で35tの牽引、10〜11マイル/時【16km〜18km/h】の速度を出すか、又はギャ比を変えて35tを5%の勾配で牽引できる機関車。
掲載したのは後者で要目は次のとおりである。
気筒直径、7in.【178mm】
気筒行程、5.5in.【140mm】
ギヤ比、1対6
動輪直径、3ft. 7in.【1092mm】
動輪幅、8.75in.【222mm】
先従輪直径、1ft. 9.25in.【540mm】
連結器高さ、2ft. 9in.【838mm】
ボイラー中心高さ、3ft.11.25in.【1200mm】
機関車最大幅、5ft.11in.【1803mm】
左右動輪距離、4ft.【1219mm】
ボイラー直径(内側)、1ft.10in.【584mm】
空車重量、4t
運転整備重量、5t

機関車の構造は図を見れば大した説明はいらないだろう。気筒はボイラーの下に接近して取り付けてあり、手が届くとは言いがたい。
【The cylinders are placed close together under the boiler, the position being such that the working gear can scarcely be got at as readily as is desireble.】
ボイラーの上には蒸気室が長々とついている。
クランクシャフトには、はす歯歯車が付いていて、これが動軸のスパイラルギアとつながっている(図2)。
動輪は、動軸に固定されてなく、渦巻きバネでつながっている(図1)。
これは機関車の発進を楽にしている。
先従輪は機関車車体中心線に取り付けてあり、それぞれは中心位置でピボットのように回転する。
その上先輪においては、これにかかる重量を自由に加減できるが、これは機関車の構造上大事なことである。
例えば、勾配が増すようなころでは先輪にかかる重量は減らし、動輪にかかる分を増し、これが粘着力増大の一助となり、また、機関車前方が低くなることによって、
【that a gradient is to be ascended; in that case the weight resting on the leading wheels is diminished, and the lord on the driving wfeels, and consequentry their adheasion, increased, while, at the same time, the front end of the egine lowered 】ボイラーの水位が平準化される。
勾配が減少するところでは、反対の作用になる。

ラルマンジャ式の客車の一例は図4と図5に示した。
図でわかるように、客車は非常に軽く旅客1人につき、180pb.【36kg】である。既に述べたように客車重量の大部分は中央レール車輪が負担する。
客車走行中は道路用車輪はほとんど接地せず、スムーズな走りをする。
この道路用車輪は車軸とは固定されずにルーズにつながっているので、曲線走行もスムーズである。

ラルマンジャ氏のシステムによるRaincy〜Montfermeilの鉄道は3マイル【4.8km】ちょっとである。
1868年夏開業のこの線は、3t機関車が2両の客車を引き、1/14【7%】の長い勾配を上り16ft.5in.【5m】半径の曲線がある。
ターミナル駅は図7に示した。
我々はは現時点で、ラルマンジャ氏の設計に沿って書いてきた。しかし、将来このシステムの利点と欠点について我々は何かしら書くつもりである。
最後にラルマンジャ式車両の説明に関して"Annales Industrielles"の助力を得た。


訳者注
Larmanjat氏発明のシングルレール鉄道です。
原典は"Engineering"1870年5月。
同雑誌の文章で少しわからないのが、先輪の重量負担調整装置で、おそらくは機関車最前部のハンドルで助手が操作するものと、思います。
この装置の目的としては、このような車輪配列では山形の折れ勾配(機関車の前が下り勾配、後ろが上り勾配になるような地点)では前後のレール用車輪が浮き上がって脱線しやすくなるはずで、それを調整する意図があるのではないか?と推測しています。これは私の勝手な推測で、"Engineering"誌には書いてありません。
なお、ネットに出ている、ポルトガルの実用化鉄道では機関車前部にハンドルが付いてないので、この装置は廃止になったのかも知れません。

機関車の動輪は多分左右つながってると思います。曲線通過の際の自動車のデファレンシャル歯車のようなものも無いと困るはずなのですが、この対策は書かれてません。

"Engineering"誌はラルマンジャ式鉄道について、「日を改めて長所と短所を述べる」と書いてありますが、そういった記事が存在するのかどうかは不明です。

ポルトガルの鉄道は開業後間もなく廃止されたようで、問題をかかえたシングルレール鉄道だったのでしょう。
ただ、当時の要請はどこにでも、とにかく安価に鉄道を導入したい、というのがあり、色々な技術者が知恵をしぼった結果の1つではあると思います。

訳文中、2箇所原文も【】で併記しました。重要な場所であり、私の訳が間違っていたら困るからです。
その他の【】は単なる日本語向け単位変換です。
【注】は物価の関係があります。1870年の英国の物価は現在の50分の1のようです。
従って当時の建設費440ポンド/マイルは全くの単純計算ですが、
440ポンド×50倍/1.6kmとなります。 ちょっと建設費が安過ぎます。

ラルマンジャ式鉄道のネットリンク
多分"Engineering"で書かれたフランスでの様子はここに写真があります。
http://membres.lycos.fr/autorail/trogui.htm?

ポルトガルで実際に敷設しましたが、結果は良くなかったです。
http://www.vialivre.org/comboios/historia/larmanjat001.html
脱線が多かったようです。

下はポルトガルの線路のポイントを描いた絵です。
http://www.robinbarnes.net/gallery40.html


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